新卒採用支援

新卒採用はどのように位置づけ、行なうべきか? <採用側からの目線に立った、その原点>

組織人事コンサルタント 永井隆雄

はじめに
 私は、10年ほど、いわゆるコンサルティングファームに勤務していた。最初は銀行系、その後、大手研修会社(ヒューマンアセスメント専業)、最後に外資系である。
ファームに勤めることによって、組織人事コンサルタントになるための基本動作、クライアントに対するスタンスの置き方を学んだが、巨額の課金(コンサル・フィー)をする外資系では、億単位のプロジェクトを演出する、その一翼を演じることが強く求められた。しかし、表舞台とは裏腹に、裏方はひどいものだった。
というのも、名立たるファームには、実際には深いナレッジもノウハウもないこと、やり手・凄腕とされるコンサルタントを自認する人物は、金儲けがうまいだけで、実際には著述ひとつできず、組織、人事、戦略に関するベーシックな理解がまるでないこと、また、全国を飛び回り、札束が飛び交うものの、まともに勉強していないことだった。今から思えば、支離滅裂でハッタリと度胸だけで渡り歩いている人がほとんどだということがわかった。
そこで、私は、ファームを辞め、長年の盟友が代表を務める(株)JEXS<ジェクス>のコンサルタントを持ち、事実上、フリーランスのコンサルタントになり、週に2日程度、年間60-80日程度、1工数30-50万という制約でコンサルティングとヒューマンアセスメントをやり、母校の大学院で自分の中にある整理されず、体系化されず、その場凌ぎで付け焼刃、断片的な知識をリセットすることにした。
私は学部で社会学、社会心理学を主に学んだ。そのため、どうしても偏った観方になってしまう傾向があった。組織と人事を考察するためには労働経済学を学ぶべきだと思い、講師としてお呼びしたこともある清家篤先生(現・慶應義塾長)を指導教授にし、商学研究科に入学した。共著の多い樋口美雄先生(前・日本経済学会長)の授業にも参加した。近代経済学に関しては、マクロ、ミクロとも相当、勉強していたが、実体経済や社会にどう落とし込みするか、私の中ではどうも腹落ちしていなかった。
商学部は、その意味で大局観とリアリズム、課題解決志向を持ち、現実の経済と社会に向き合い、綿密なアプローチをするスタッフがそろっていた。経済学部にも優れた研究者の方はおられるが、クラシカルで、理論マニア、歴史、各論など、どうもアカデミックすぎるきらいがある。
私は、学生時代から、哲学、現代思想などの本も相当、読んでいたので、アカデミズムに興味がないわけではなかったが、実務家である自分が高踏的、好事的になって、例えば、マックス・ウェーバーの理論研究などしても無意味なので、商学部の雰囲気が肌に合った。
ウェーバーはひどい躁鬱病で、大学教授になりながら、一度も教壇に立ったことがなく、生涯の大半を寝て過ごしていた。最初の躁状態の時、ほとんど不眠不休で、膨大な著作を書いて倒れ、そのまま10年以上寝込んでいたが、再度、軽い躁状態になって、著述をし、その半年後に亡くなった。晩年の著述は支離滅裂で、弟(アルフレッド・ウェーバー)が全部校正し、書き直した、とされる。明らかに重い精神病患者である。
ともあれ、私は、労働経済学の教科書、ノーベル賞受賞の決め手になった論文の購読、その他の授業を受け、人事評価で修士論文を勘弁してもらい、時間的余裕を自ら作ったので、人事管理や組織行動、産業・組織心理学などの英書を取り寄せて学習した。また、参照とされている英語の論文を読みふけった。
幸い、英語は高校時代にずっと模試で全国10番以内だったので、学部時代に苦しんだ哲学や社会学の原典に比べたら、米国の教科書や論文、経済学の英文はレトリックがなく、読むのは簡単だった。
博士課程では、社会学研究科に進んで、産業・組織心理学を専攻した。その後、地方の国立大学の経済学研究科にも在籍した。私が、地方に行ったのはたまたまなのだが、首都圏や関西と違い、しかるべき人に依頼すると、質問紙調査が75%以上の高い回収率で実施でき、大学ではさほど学ぶことがなかったが、研究・調査ははかどった。
その後、私は、再び、研究と読書をしつつ、執筆、講演、コンサルタントの仕事に戻って今日に至る。その過程で、多くの経営学者と接点を持ったが、わずかな例外を除いて、実際の職場や組織に立脚した研究と洞察ができている研究者はほとんどいなかった。また、サーベイしているのが日本語の経営学書で、組織や人事労務の研究動向を熟知し、かつ実際の企業で実務家と向き合って研究を展開しているかというと、ほぼ皆無だった。
本書は、私が10年余り、労働経済学、産業・組織心理学などを学んだ成果を踏まえ、整理された知識と知見から、新卒採用について、採用側の目線に立った観点で解説するもので、実務実績を踏まえ、そのスタッフが書いた原稿や所見をまとめたものである。「新卒採用原論Ⅰ」だと言っていい。他方、応募者側の視点で別途、展開をしたいと考えている。

 永井隆雄

1.新卒採用とは何か-その意義、位置づけ、原点
さて、新卒採用とは、「新規学卒一括採用」のことである。
日本では、大卒を想定した場合、年度によって違いは多少あるものの、おおむね、大学3年次の期末試験が終わった時期から、学生は企業研究に本腰を入れ、企業も会社説明会などを徐々に行っている。4年になってからという協定などが打ち出されることもあるが、まもられたためしはない。
私の頃は、秋の10月1日解禁ということだったが、連休明けには散発的に始まり、7月末には終わっていた。そうしないと、採用担当や社内の採用協力スタッフが夏休みを取れないからだ。
戦後間もない頃、就職活動(いわゆる、就活)は、大学4年の卒業が確定した後、2週間ほどの間に、筆記試験と面接で決まっていたそうだ。当時は大卒者も少なく、企業ごとに採用指定校が明確だった。その後、変転を繰り返し、高度経済成長期は、大学1年次に内定を出した時期もあるようだ。しかし、上記の時期が季節的にも企業にとっては都合がいい。
なぜなら、採用担当は、季節労働者で、
①採用活動の準備
②採用活動
③新卒者/新入社員の受け入れ支援
④休暇
⑤次年度の採用計画の調整
 といった、サイクルで動いている。
 特に、新人の受け入れが4月で、多くの企業が3か月程度は新卒者の研修を行ない、採用担当はその大枠をコーディネートするので、4月の中旬以降に、形式的な役員面接や、さらに、それ以降に内定通知書や入社応諾を確認する文書を交わすとしても、新人研修と採用活動を同時並行では、無理がある。
 そこで、大手の人気企業は、新人受け入れの前の段階に、内々定を出し、大手でも一般職の採用、また、中堅中小企業は、新人受け入れの目途が立った後に、採用活動を行なうことになる。採用が難しい企業は、8月は採用活動を控え、その後に補充する形で新人確保を行なう。
 大学は文科省の規定によると、3年間の修業年限でも構わない。実際、3年で卒業できる大学も実在する(例えば、立命館アジアパシフィック)。また、大学の判断で、秋入学した学生を3年半、あるいは4年半で卒業できるようにしているところもある(慶應藤沢など)。
 東大の秋入学が検討されているが、既卒者を採用する慣行がないので、もし東大が秋入学、7月卒業などになれば、3年半卒業と4年半卒業、進学する場合は4年卒業、企業は在学したまま入社させ、4月入社で、大学は名ばかりの所属で7月卒業、実質的に3年半の修学になることになる。あるいは、入社前研修を4-6月に受け、7月または8月に正式に入社するかだろう。
 東大、京大など研究拠点校が数校、秋入学にしても、その数は採用数の中で、そう多くないのが実情である。採用のボリュームゾーンが秋入学にならない以上、東大、京大などの学生は、4年目の前半の終わりになる3月末で中退し、4月入社でもいいということになる可能性もある。実際、外務省は、東大卒より、3年次修了、中退のほうが、箔がつくという伝統があるので、東大、京大など研究拠点校以外でも、中退歓迎になる可能性もある。
 なぜかというと、日本の上場企業は、
①決算期が4月に始まり、翌年の3月末に終わること。人事異動などもそれに連動している。
②大学で何を学んだか、ほとんど重視しておらず、大学に余計に在学して能力が伸びるとはまるで期待できないと考えている。
③就活が始まったら、それにほぼ専念し、あとは休養のような状態なら、ふらふらしているなら、早く新人教育したい。
 と考えているからである。
 このような方針や考え方が変わらない以上、先憂後楽ではなく、ギャップイヤーでたるんだ分、先楽後苦でいいと考える。東大なども、中退でも、法学士、経済学士などを出せば、それで済む。
 ちなみに、博士課程は、早期修了が可能だ。1年で博士号を取得できる課程も実際、あるほどだ。であれば、学部も単位取得退学(法学士/経済学士)があっても全くおかしくない。
 ただ、これは学卒の場合であり、修士卒は、まとめて秋採用にし、1年半または2年半で修士修了とすることはありうるかもしれない。研究職やエンジニアを想定している技術系では、半期削るよりは、余計に学んでくれた方がよいという判断はありうる。
しかし、博士課程に進んだ人物は要らない。なぜか?
日本では、博士号など企業のエンジニアにはどうでもいいことで、1-2年ならともかく、3年も遅れて、27-28歳、あるいは、それ以上になった人物を、自社の人材育成の仕組みに乗せても、活躍するかわからないし、学生感覚の長い人物を企業の想定するエンジニアにできるか、悩ましい。
エンジニアの活躍期間は主に30歳代なので、修士卒なら、5年で育成し、その後、ようやくサブ、その分野の専門家にして10年程度、活躍が期待できるが、3-4年遅れると、5-6年ほどしか活躍する時期がなく、これでは、人材育成のために投下するコストが回収できないので、採用するという判断は限られてくる。また、訓練容易性という観点からすると、25歳くらいで会社に入っておいてほしいということなのである。
 
2.企業は新卒採用で何を診ようとしているか?
企業は、事務系総合職に限って言えば、基本的にどんな専攻でも構わないと考えている。業界によるが、文学部と教育学部、外国語でもマイナー言語専攻は採用対象でないというところもある。
ところで、どうしてこのような事態になってしまったのだろうか?
明治10年、東京大学が成立し、その中に法学部と文学部ができた(厳密には法科大学、文科大学)。その際、法学部は法律学のみで、当初はフランス法系、その後、英米法系が中心となった。
文学部には、和漢文学科と哲学及び政治学科ができた。しかし、当初の卒業生は、哲学は1名、政治学が4名といった感じで、その後、徐々に増えたので、独立して政治学科ができた。政治学科はその後、政治学及び理財学科となったが、当初は、東京大学の法と文を卒業すれば、高等文官試験を免除し、任官が可能だった。
その後、法学部に政治学科として移管され、理財学(今の経済学)は政治学科の中の講座として置かれた。その後、大正時代、経済学部が成立する(大正13年)。大正12年に大学令により、私立大学が専門学校から官立の大学と同じ「大学」として認可されるように決まった。
このとき、いち早く大学昇格をしたのが慶應義塾で、それまで大学部理財科だったところ、慶應義塾大学経済学部ができた。その翌年に、東大(東京帝国大)は経済学部を独立させ、主な私学10校ほども大学になった。わずかなのだが、最古の経済学部は慶應なのである。
他方、政治学科が抜けた東大文学部は、一時的に、生理学など、今では理学部や医学部で扱う講座なども抱え、哲学・史学・文学の3学科に再編され、その下に、専攻が置かれるようになった。
その当初の専攻は今の主要な私立大学の文学部の専攻と似ているが、戦後、東大は、30以上の専修課程に分化している。
ところが、政治学と経済学を当初、主とした文学部は、高等文官試験免除の対象外となり、その進路は、大学、旧制高校、旧制中学などの教員・研究者か、漱石が描く高等遊民となるための、言うなれば、隠遁者養成課程、現代の鴨長明(方丈記)輩出校になってしまった。
終戦直後、東大文学部卒業者の進路を見ると、ほとんどが不明で、まともな就職先に就いていないことが判明している。とはいえ、まだその当時は、教養を持つ人物は、社会的に尊敬された。しかし、文学部が巨大化し、東大・京大といえども、研究者になるのは1割もいない。
さらに、大学生が学問、学究以前に、勉強などの二の次になり、教養など何の価値もなさない時代を迎え、現在では、主に文学部への進学を主とする、東大の文Ⅲの新入生の7割以上が、将来の進路が不安で仕方がない、と答えているという。しかし、進路がない可能性が濃いと知りながら、膨大なコストと時間をかけて東大に入ったのか、その動機は何だったのだろうか、という疑問も湧く。
7割の新入生が将来に何となく不安を覚えると芥川龍之介の遺書のようなことを入学時から言うのなら、不安度調査を行ない、今の4分の1だけ、入れたら、済むだろう。日本の社会から、数百人もの若者、そして、晩年の芥川のような人物を安心できる場所に送り込めるからだ。
不安はうつになり、自殺を招くことにもなる。
さて、大学生に対して、企業が行なうテスト、あるいは基準は4つある。
①言語・概念化の能力 文系の能力、理解力や語彙、情緒的思考や感情理解の基礎となる能力
②計算・幾何・論理性の能力 様々な職務において必須となる計算、論理的思考力、理数系の初歩、プロセスを導出する能力
③資質や行動特性などの傾向 課題に対して高い到達度を求め、計画的に、段取りよく物事に対処し、安定した行動、態度を発揮する能力
④英語力 従来は、一部の企業でしか行われなかったが、グローバル化によって、企業の多くが応募者にTOEICのスコアが何点以上と提示している。
多くの企業で実施されているSPIでは、①の能力を「言語」のテスト、②の能力を「非言語」、③の傾向を心理テスト、もしくは適性試験と呼んでいる。
英語は、自社で実施しているところもあるが、多数の応募者を1つの場所に集めるだけでコストが大きいので、TOEICという民間団体が実施しているもので代替している。
ほとんどの企業で英語など実務を行なう上で必要としない。休日や仕事の合間に歩いていて、外国人に道を尋ねられて、親切に英語で案内するのは勝手だが、それができても1円の得にもならない。持ち物を落とした人に声かけして渡す行為と差はない。
ただ、英語力はその人の高校までの成績全体にかなり相関している。また、ほとんどの大学が入試で英語を必須にしているのは、大学入学後の学習能力と英語の実力が相関しているという事実もある。しかし、帰国子女や英語をネイティブとする人に、これは当てはまらならない。
正確な数字はわからないが、国立大学で事務系就職の対象となる学部(法・経済系)と私立大学の人文系と理工系を除いた学部のシェアはおよそ1対9と考えてよいと思われる。そして、1割と一部の私大文系受験生が数学を真剣に学び、試験を受けているが、9割弱もの受験生は、高校に入った時点から、数学と疎遠になるという現実がある。おそらく、これほど数学を軽んじる国はないだろう。
英語はほとんどしゃべれない。計算はデタラメ。新聞の社説程度の内容もおぼつかない。そんな若者を大量生産しているのが、日本の大学である。
あらゆる職務で背骨になる計算や論理の力をチェックするために実施されているのは、小学校高学年から中学2年くらいにかけての知識があれば、解ける問題だが、それには迅速さが期待される。
ちなみに、SPIという試験を使って、大手企業(ざっと上場会社のうちの2000社程度)の場合、非言語のテストで足切りされる私大生のレベルはどのくらいかというと、偏差値60程度(上位10%強)の水準で半分程度だという。全体の学力が上位1割強で、その半分が弾かれるということは、同世代で実質的に5%の学生しか残らないことになる。
もちろん、求める水準は企業によって異なるが、①及び②、そして、④の選抜で3%くらいしか残らないということである。
このような仕組みがあるので、企業は指定校制を敷く必要がなくなった。かつての指定校制度などより、信頼性の高い正確な選抜ができる仕組みで、面接の前に切れるからである。おまけに、SPIなどのテストは、企業の会議室や、手配した会場で受けるのではなく、全国各地にあるテストセンター、あるいはオンラインを通じて、学生のパソコンからアクセスして実施することができる。
また、③の傾向(パーソナリティ、資質、意欲など)は、企業側のパーソナリティや資質特性に関する知識が驚くほど稚拙なので、膨大な時間を割かれながら、まともに読み取れる採用担当者、人事担当者がいない。
これは、大手企業の場合、文学部や教育学部という心理学を扱う学部の学生を採用することが少ないということもあるし、労組対策をさせるために、法学部出身者を好む傾向があるからだろう。
簡略に言えば、情緒不安定、気分性の高い人、心配性で不安になりやすい神経症傾向の項目でスコアが基準値より高い人を落とすために使っていることが多い。ただ、どんな質問をされたら、どう評価されるか、賢明な学生は考えて答えるはずなので、こうした項目に正直に「はい」、「全くその通り」と回答する学生はバカだとは言える。しかし、このようなテストを妄信して人材選考をしている企業もかなりある。
恋人に会うたびに、愛情などまるで感じていない。ただ、性欲の処理が目的だ、と言って恋愛関係が維持できるだろうか。
たとえがよくないかもしれないが、その意味では、性格テストや適性テストを実施する意味がある。
現在のIT技術からすると、3分間のプレゼンを動画で添付して送ってもらい、採用担当が最初に1分ずつ見れば、実は内定を出すことが可能である。しかし、それで内定が出るのでは、就活という国民的イベントは盛り上がらない。
そこで、様々な形での選考、集団討議や個別面談を行なうのだが、学生が思っているような面接のノウハウもスキルも、大半の採用担当者は持っていないし、大半の面接での選考は人材の選考という訓練を全く受けたことのない各職域のミドルマネジャーに委ねられる。
私は、提携講師と一緒に協働で長年、管理職選抜のアセスメントを行なってきた。累計すると、1万人に近い対象者がいる。その際、全体の評定を調整する役をアドミニストレータという。アドミからみると、複数の評定者(アセッサー)が、どの受講者に対して、20ほどの項目について5点法で何点をつけているか、仮に標準点を60にした際、何点くらいの上下かは、手に取るようにわかる。フィードバックしても、その癖のある人物評定はほとんど修正されない。
また、採用選考の面接や集団討議の指導・訓練をすることも多い。そこで、わかるのは、1日も研修をやると、どんな仕草や言動に、プラスとするか、あるいは不可とするかは、いくつかのパターンにくっきり現れる。
その面接スキルは、大手人気企業でも著しくお粗末だ。
米国では、採用選考は雇用機会均等法に基づき、厳正に実施しないといけないので、面接に関しても、様々な技法や評価法が確立されている。しかし、面接技法などを解説しても、それを使いこなせる人は少ない。
応募者である大学生が聞くと、衝撃を受けるかもしれないが、面接は30分程度実施されても、合否・適否は、応募者が入室してから2分以内に決まってしまっているのだ。

3.新卒採用はいかに計画し、実行されるべきか?
ここでは、一般論は割愛したい。
まず、いくつかの実情を指摘しておきたい。それは、人気企業上位200に入るようなところは、採用広告費はミニマムで収まっていることだ。これに対し、人気度、銘柄度、認知度などが下がるのに従い、一人当たりの採用コストも、採用広告費も莫大であることだ。
社名が挙げられないが、新興上場会社や業界の3番手以下などの企業は、少なくとも1桁は違う採用広告費を使っている。具体的な金額は年度により異なるが、大手の採用意欲が強い時、一人当たりの採用広告費は初任給で割ると、6-10か月分に相当する。
しかも、採用広告費の大きな会社は、面接や応募資料処理などの工数も大きく、辞退率が高いので、機会費用のロスが非常に多い。極論すると、10人中9人まで、採用面接の練習に来るような会社もある。
人気企業のトップ50になるような企業のエントリーの母集団は天文学的な数字である。その企業の全従業員数に匹敵するようなケースもある。そんな企業では、採用面接の工数を減らすかが課題になる。
ジェクスでは、採用選考のプロセスに向けた、あらゆるコンサルテーションとトレーニングも実施しているが、採用業務の受託サービスを行なっている。具体的には、会社説明会実施の代行、集団討議の実施の代行と評価のレポート、一次の個別面接の実施と簡単なプロフィールと評定基準別のスコア、入社動機の強弱など、細かいレポートまで行なっており、ほぼ合否を固めて推薦しているクライアントもある。
学生からは見えにくいが、流動的で、気まぐれな学生の「就活」を企業サイドで対応すると、内部で全部やるのは難しい。その理由のひとつは、ドタキャンである。
2014-16年の実情から言うと、比較的大手企業に限っても、関西では、面接をアポイントしてもおよそ半分、首都圏の場合、3分の2以上、何の連絡もなし、にやってこないという。企業によって、その確率がもっとあり得ることなので、採用活動の前さばきを外部委託することが効率的で効果的になっている。

4.新卒採用でいかに選考プロセスを組み立てるか?
新卒採用という業務プロセスを考える際、20年以上にわたって、採用活動支援をしてきたジェクスでは、時代と年度ごとの温度差を確認しながら、年々徐々に、よりよい採用活動が行なえるように企画提案し、そのための支援を惜しまない。
ところが、選考プロセスを軽視する企業があまりにも多く、提案や、おこがましくなるが、助言などを行なうのだが、企業側の観念や価値観などに影響を与えていくのは難しい。
多くの企業が、効果的な採用広告、母集団形成、いわゆる市販の適性試験での絞り込みをし、集団討議させて、学生の雰囲気をつかんで、個別面談に落とし込む、というプロセスを取っている。しかし、適性試験での絞り込み以降の採用活動は、科学的管理法を提唱したテイラー流に言えば、その場しのぎの成り行き管理となっている。
集団討議(1時間程度)を実施すれば、訓練されたアセッサーなら、15-18名程度は評定が可能である。その場合、3グループ程度に分け、綿密に観察・記録し、評価するなら、一人でよい。
ただ、あらかじめ、集団討議では、絶対評価ではどのくらい、相対評価なら3割程度と事前に決めておけば、要観察対象の学生は最初の10-15分で半分程度になるので、社内の担当者2名とジェクスからスタッフ1名の体制で、1セッション50分とし、30名程度、5グループとし、1日5回転、200名程度を50名程度に絞り込める。
しかも、印象だけの評価ではなく、
①要点把握力
②問題分析力
③傾聴力
④共感性
⑤柔軟性
⑥率先性
⑦コミュニケーション力
⑧対集団活性化力(影響力)
⑨課題解決志向
などを評価することができる。
また、40-60名程度の基準超えとしても、その中での順位もつけることができ、個別面談で要確認事項を明らかにすることができる。また、スコアをもとにして、サンプルが300名もいれば、クラスター分析などを行なうことで、タイプ分けすることができる。
例えば、次のような分類がありうる。
①ヒットラー型 討議を通じ、一貫して自説を曲げず、脈絡なしに声高に自己主張する
②風見鶏型 他の討議メンバーの意見や、グループの合意に付和雷同、右顧左眄する
③ナイチンゲール型 周囲への気配りとケアだけに徹する 盛んにうなずく
④朝まで生TV司会型 討議を巧みに活性化し、時に遮って、押し切る
⑤ドラえもん型 メンバーの疑問や討議の流れに則して的確なアイデア、解決策のヒントだけ出す
⑥フェラーリ(ポルシェ)型 頭の回転が速く、周囲についていけず、的確な解決策を示し、どんな反論や提案も却下し、しかも、最終的にグループの合意を得る形でゴールインする 全体の発言量の8割以上、理路整然と巧みな言い回しで早口で話す

どの学生がいいかは一概に言えないし、ある程度、ミックスしているほうがいいだろう。特定のタイプだけのモノトーンな組織は、危険、もしくは収拾がつかない。また、自社でどのような職種でどんな学生がほしいか、そこに、1年ないし1年半の訓練や学習で、どうなるか、訓練可能性、開発可能性なども考慮しなければならない。したがって、合計点がたかいだけがいいわけではない。


<採用支援を中心に関与した主要取引先>
アズワン、アンダーツリー、伊藤喜商事、伊藤忠商事、エレコム、大阪ガス、大阪商工会議所、大阪水泳協会、オンキヨー、川重冷熱工業、キャノンライフケアソリューションズ、共生レンテム、近鉄観光、近鉄リテールサービス、クラボウ、コープ神戸、佐川急便、ザ・ヒューマン、JFE、JRIかに道楽、シティーヒル、JUN、シルバーオックス、新阪急ホテル、スカイラーク、住友化学システムサービス、住友生命保険、第一物産、ダイセル化学工業、大日本除虫菊、ダイワサービス、大和リース、タカタ、玉屋、中部電力、ティーアイエス、ティップネス、ドトールコーヒー、トリンプ・インターナショナル・ジャパン、南海辰村建設、日本航空、日本生命保険、日本データコントロール、パソナ、パナソニック、パル、日立物流、フジクラ、ベニックソリューション、毎日放送、マルハン、ラウンドワン、レオパレス21、ロッテリア、ローム、他、各グループ及び各社 約200社。