問題解決演習

<問題解決処理演習>


 あなたは、三沢工業(株)の営業課社員です。名前は山口研一です。
 営業課は商社機能を強化していくと掲げている三沢の看板であり、総勢40名の部署である。しかし、管理職は成沢課長と玉木課長代理だけで、玉木は担当柄、中国を中心とするアジアによく出張に行くこともあり、実質的に成沢課長一人で総括をしているのが現状だ。
 あなたは管理職ではありませんが、中堅社員であり、時々、上司である成沢課長から、「職場には問題山積だから、君も課長補佐に任命されたくらいになった気持ちで若手社員や同僚社員、取引先などで起こっている問題があれば、積極的に声をかけ、責任をもって関わってほしい。頼むよ。私一人だけではとても無理だ」とよく言われている。
 とはいえ、正式にはあなたに課のメンバーに対する指導や取引先との交渉というのは職責にはない。成沢課長は、そのことも踏まえ、「君の活躍次第で何らかの職位変更をするなり、何らかのインセンティブを考えるから、まずは動いてくれ」ということだった。
 あなたは成沢課長の思いを自分なりに理解し、一定の範囲で気づいたことについては動こうと考えました。また、中堅社員として責任、役割を改めて認識するに至った。
 そんな中、あなたの個人的事情で会社を休まざるを得なくなった。
 出社してみると、1週間ほどの間に、いくつかの案件が舞い込んでいた。そして、成沢課長より「山口君、君が不在の間にいろいろあったんだが、ある程度の件数なんだが、私(成沢課長)宛で未処理になっている相談案件がある。悪いが、私は今、多忙を極めて処理できない。代わって君に処理してほしい。私からは山口君に相談し、助言してもらってくれと皆に話してあるので、よろしく頼む」ということだった。
 折しも出社したのは、大型連休2日目の土曜日で10日間ほど職場には誰も来ない。したがって、相談者に直接話すことも上司の成沢に相談することもできない。
 あなたは事情があり、2時間後には職場を出て一旦、帰宅し、用事があるので、連休中、
全く出社できない。
 相談案件に対しては連絡文(メッセージ)またはメモ(予定や計画、腹積もりなど)で処理してください。連絡文には必ず宛名を記入してください。メモは連休後に出社した際、あなた自身のために記すものです。

 あなたは山口研一。今日は2019年4月4日(土)10時です。あなたは職場を12時に出ないといけないです。したがって、相談案件にあてられる時間は2時間しかありません。

 なお、この問題解決演習では、次のような評価基準で回答者の答案を採点します。
 (1)理解:資料から職場の問題点をどれだけ的確につかんでいるか。
 (2)表現:読み手に向け、国語的にまた相手に応じた適切な表現を取っているか。
 (3)感受性:相手や周囲、関係者の立場や心情を理解し、適切に反応しているか。
 (4)判断:自分自身の立場を踏まえて適度な介入を行ない、正しい意思決定をしているか。


<案件1>

成沢課長

 入社して1年余りになります。3年目社員だった突然、山下さんが抜け、その仕事のかなりの部分を代行するようになり、この数か月、残業続きで、毎晩9時近くまで働いていて、昼休みもろくに取れない状態です。自主的に土曜日もたまに出ています。普段の日は電話応対もあり、仕事が中断され、はかどらないことが多いんです。土曜日だと、電話がなく、業務処理もはかどります。いっそのこと、隔週に平日1日休ませて頂いて、土曜日に出るほうがいいかもしれないです。ただ、土曜の出勤については何の手当もなく、代休が取れているわけでもありません。
 とはいえ、今のまま仕事が続けられるのかという不安もあります。現在、担当している仕事が2年目になったばかりの私には難易度がすごく高く、人に聞いて教えてもらってやったりしないといけないし、できれば誰かに代行してもらいたい仕事があるし、正直今の体制で今後もずっとやっていくのなら、私も消耗していくので、人生を仕切り直して、新天地で働くのも、とかちらりと考えてしまうこともあります。
 ともかく、人員体制などの見直し、増員などで改善を図って頂きたいと思います。

唐沢


<案件1-解説>

 2年目社員である唐沢君が本来の自分の仕事以外に、先輩社員だった人の仕事のかなりの部分を代行するようになった。当然のことながら、定時でこなせなくなり、残業したり、自主的に無給で土曜にまで出勤している。そして、表現はともかく、疲労困憊する中、もうこれ以上、この会社で働くのは無理だとまで言い出している。
 仕事の出来栄えなどは不明だが、勤務態度や責任感などを考えると、今後とも留まってほしい人材であるし、職務分担の適正化、ワークライフバランスという観点からしても、改善すべき問題である。
 営業課の中のグループなどは不明だが、同一グループ内での仕事の割り振りを見直すべきだし、まずは激務で疲弊している唐沢君に励ましの言葉をかけるべきであろう。



<案件2>

成沢課長

 営業課の人員構成を追ってみました。
 営業課は他の部署に比べて離職率が2倍を超えていますね。
 ある程度、それを見越して採用計画を立てていますが、出入りが激しいと新卒市場で難しくなります。
 というのも、学生だって離職率とか聞いてきますし、やめた社員がどんな会社だったか、自由に書き込めるサイトもあるんです。
 今のところ、そういう恥ずかしい書き込みはないですが、今のままではいつそういうことになってもおかしくないです。ネットの情報は影響力が大きく、内定を出しても最後は辞退されてしまう、そんなことになりかねません。
 つきましては、人事課も支援しますが、営業課として離職者防止の対策をお考えいただき、課としての意向をお知らせ頂きたいとお願いします。
 

人事課 平川




<案件2-解説>
 中小企業では、多かれ少なかれ、離職率の高さに悩んでいます。
 そればかりか、みずほ銀行も新卒の離職が3年以内で3-4割で推移した時期があります。多くは外資系などに移ったそうです。
 若手社員は、中高年の社員の扱いや将来の自分の姿を意外によく考え、八方ふさがりになると思えば、早めによそにかじ取りすることもあります。
 人間関係、仕事に対する不適応、過重労働、たくさんの離職原因があるでしょうが、人事課から検討し、対策を考えてほしいと言われた以上、何らかのアクションを起こさないといけないでしょう。
 飲み食いできるというのも昔は会社の魅力でした。しかし、現在の若者は、飲み食い自体をあまりありがたがらないし、会社でアフターファイブにそうした拘束を受けることをことごとく断ることさえありますし、それを無理強いするのは無理です。



<案件3>

成沢課長
 
 以前からご相談申し上げたかったことなのですが、たまりかねて相談させて頂くことにしました。
 それは栗田さんのことです。栗田さんは新卒で入社し、私より社歴もはるかに長いです。また、役職も主任の肩書があります。部下はいませんけど。
 その栗田さん(36歳)が、一回りも上の私に、同等以上の物の言い方で上から目線の指示や命令をするんです。
 私は栗田さんほどこの会社には在籍していません。しかし、他社での業務経験ははるかに上だと自負しています。 
 正直申し上げて部下指導の経験もなく、業務経験も不十分な人物から、偉そうにされるのは心外ですし、不愉快です。
 ご存知のように、私は前職で課長職を5年やり、御社の誘いもあり、転職してきました。役職にはあまりこだわるつもりはありませんが、部下なしの主任なんて、前の会社にはなかったですし、また栗田さんのように野卑で粗暴な人物もいませんでした。
 何度か殴ってやって、そのまま会社を辞めようかと思ったことが一度ならずあります。
 そもそも主任って何なのですか?彼は一担当の仕事をしていますし、彼の同期に当たる社員は既に課長代理などの役職に就いているし、彼らは私から見ても近い将来、課長は十分やれると思います。
 どうしてこの会社の古参の社員は、栗田さんのような社員の横暴を放置しておくのか、私には理解できません。
 この問題にきちんと対処して頂けないなら、私なりにそれなりの対処を取らせて頂くつもりです。

木本



<案件3-解説>

 他社で管理職をし、当社に乞われて移った木本がどれだけの活躍をしているか、それは定かではないが、そういう経緯からすると、それなりに優秀な社員なのだろうと思われる。
他方、栗田は同期よりも昇格・昇進が遅れており、その意味で何か問題を抱えた社員であると推定され、しかも、木本に対する態度、言動などはかなり問題があり、一般的にいうパワハラになっている。
 とりあえずは日々、その言動に不愉快極まりないと感じている木本に対し、共感的な態度とメッセージを送る必要がある。
 また、栗田に対して早い段階で話し合いの機会を設け、木本以外の社員に関しても、そのような暴言がないか、確認しないといけないし、継続的に経過を監視すべきだろう。木本の指摘するように主任という肩書もよくないのかもしれない。その点も見直死をすべきだろう。



<案件4>

成沢課長

 なかなか対面で直接お話しできないのですが、営業課内の実績の件です。
 新規事業として強化しているITなのですが、担当の平木さんの昨年1年の実績はソフトの販売などでわずか8万円程度しかないということを知りました。今年で4年目になるIT事業で、たくさんの提携先があるようですが、全くわが社の数字にはなっていないことは明らかです。
 平木さんはしばしば提携先を訪問すると言って出かけていますし、物静かな人物ですが、あのようなごくつぶしを抱えておく意味があるのでしょうか。極めて遺憾であり、疑問です。
 正味3年で20万ほどしか稼げない事業を抱えておくのは不採算極まりないと思います。
 営業課の営業担当の平均収益は粗利で2500-3000万、もちろんこれはベテランから新人までの数字を含んでいますが、5000万以上という担当も数名いますし、新人でも1000-1500万程度は稼いでいるのです。

露本



<案件4-解説>

 どこの会社でも仕事の振りだけして実質的に何もしない社員がいるし、また、新規事業というのは立ち上げの時期、一定期間、収益を生まないこともある。
 しかし、平木の場合、3年余りを既に経て、些少の収益しか上げていないという。しかし、平木にすれば、何か大きなプロジェクトになるようなことを考え、準備しているのかもしれないし、そのためには一人での新規事業は何かと進めにくいのかもしれない。その辺ははっきりしない。
 不確定な要素が多いだけに安易に平木にメッセージを送るわけにはいかないが、思いついたことをメモ(気づいたこと、腹積もり、計画など)に残し、休み明けのどこかで上司の成沢課長と話し合うべきである。



<案件5>

成沢課長

 営業課の美人アラサー、木村美智子さん(30歳)の件です。これは私が親しくしている女子社員の話ですが、女子会をやった際、「今度、ホストクラブに行かない?、楽しいし、アフターもできるよ」って誘ったらしいんです。酔いもあって、どこまで事実か不明ですが、木村さんの話だと週に2-3回はホストクラブに行き、アフターもするそうです。1回行くと、10万は最低かかるらしく、木村さんの給与を全部つぎ込んでも支払いができないような金額です。
 木村さんは独身なので、イケメンのホストとホテルに行こうが、何をしても、当社としては構わないのですが、まずその頻度でのホストクラブ通いが本当だとしてその金の出所はどこなのかということです。
 木村さんの父親は大手とはいえ、普通のサラリーマンだったはずで、実家にそんなに散財できる金があるとは思えません。もしかして風俗で働いているんでしょうか?
 確たることはわかりませんが、本人に確認を取るなり、状況次第では興信所で調査をしてはいかがなものでしょうか?
 昨年、営業課で成績のいいのがいて接待と称して新地のクラブで豪遊、ホステスとコスプレ着て高級ホテルで遊んでいたのが、実は多額の横領で解雇になったという事件があったこともあり、心配しております。
 木村さんは学生時代、水着や着物などのモデルで、万が一メディアに出るなんてことになれば、当社の信用がた落ちだと思います。

桑原



<案件5-解説>

 他の案件(<案件10>)に出てくるが、当社ではいわゆる交際費・接待費があらゆる費目に変えられて処理することが可能だという。実際、このような会社はある。
 しかし、会社の経費は、旅費日当のようなものは別にして、営業活動に何らかの形で役立つものが接待費として処理されるべきである。
 木村美智子の使っている金の出所は全く不明だし、木村が話の通り、かなりの頻度で本当にホストクラブに行っているのか、そして、アフターということで、ホストとデートしているのかは定かではない。女子会で冗談まがいに言っただけのことかもしれない。
 事実関係があいまいなのに、不用意に木村にメッセージを送るのは早計であるが、木村さんと話し合う予定を入れる、メモとしてどんな話し合いをするのか、その腹積もりを考えることは必要なことだ。
 他方で、上司の成沢課長にも報告して話し合いを持つべきか、どこかの段階で決めるべきだろう。


<案件6>

成沢課長

 実は天木さん(45歳)のことなんですが、メンタル的にかなりまいっているようなんです。一度、心療内科に行って相談したらしいのですが、その薬を飲むと、かえって調子がおかしくなるということで、しばらくして服薬はやめたそうです。他方、やけ酒のように飲酒が増え、毎晩、相当飲んでいるらしいというのです。
 医学部生をしている身内に聞いたら、メンタルによくない際、最も好ましくないのが飲酒らしく、特に飲酒と精神科の薬を飲むと、よくないということでした。ネットで調べてもそのようなことが書かれていました。
 仕事の能率も落ちており、ミスやうっかりも多く、困った状況です。また、本人の年齢を考えると、まだまだ頑張れる年代なので、心配しております。
 どうしたものでしょうか?

保木(やすき)



<案件6-解説>

 天木はどうもメンタルな問題を抱えているようである。
 しかし、このような問題は本人の表情などを見ながら慎重に話すべきことで、いきなりメッセージを送るのは望ましくない。
 ただ、この案件は他の案件と異なり、1日を急ぐ問題ではない。とはいえ、保木から報告があった以上、天木や保木と面談する機会を設け、どのような話し合いをするか、腹積もりをすべきだろう。



<案件7>

成沢課長

 ご存知の通り、大型連休の最後の2日、三沢でキャンペーンをやります。つきましては、営業課の中から女子社員を2名参加させたいと、念のため3名の適任者にメールで連絡しておいたのですが、今も手配がついていません。
 社員を参加させる意図はキャンペーンガール(6名)だけでは会社のこともわからないし、現場が回らないのではという懸念です。

  藤川玲子(24歳) 有給休暇申請
  中島良子(25歳) 有給休暇申請
山根慶子(25歳) 有給休暇申請

【資料】就業規則抜粋
    従業員は年次に応じて有給休暇を申請することができる。
    ただし、会社の都合によりその時季の変更を求めることができる。

成田



<案件7-解説>
 
 この案件は連休中の出来事なので、もし人員を出すなら、急がないといけないし、3人の女子社員と連絡を取り、調整しないといけない。しかし、女子社員の携帯電話の番号を管理職でない者は把握していない。難しいところだ。
 ただ、実際に派遣社員だけではなく、女子社員を本当に出さないといけないのか、これもはっきりしない。
 何らかの決断をして、関係先にメッセージを送ることになるだろう。


<案件8>

成沢課長

 成沢君、実は内々に耳に入れたくて機会を探っていたのだが、当社は海外事業、特に中国で相当穴(およそ100億円相当)が空いており、今年から来年にかけて従業員の3割減を目安にしたリストラを行なう腹積もりとなった。まだ社員が動揺しないように慎重にこの件は取り扱ってほしいのだが、稼ぎ手ではあるが、社内で大所帯の営業課はどうするか、成沢君なりの意見を聞きたいと思っている。この件はあくまでも極秘で頼むよ。

 
 



取締役 西澤



<案件8-解説>

 この案件はおそらく成沢課長があやまって回してきたものだろう。取締役の西澤は機密事項だと言っている以上、あなたが知っているのはおかしい。
 案件に関して一切、関係先にメッセージを送るのは控え、あなた自身も、この件について黙秘しないといけない。



<案件9>

成沢課長

 弊社と研究開発で提携している国立東京工科大学から研究予算充実のため、寄付してもらいたいという申し出があります。向こうは三沢さんなら1億円程度と言っているのですが、額はともかくそれなりの寄付をすべきと思います。
 成沢課長のご意見をお聞かせ下さい。私は、海外事業も幅広く展開し、業容も大きく広がったし、1億円が妥当と考えます。

研究所次長 荻野




<案件9-解説>

 案件8の状況からすると、このような寄付はとてもできる状態にない。しかし、寄付はできないと言えば、その理由を勘繰られることになる。
 やはり未処理にし、あなた自身は一切動くべきではない。



<案件10>

成沢課長

 営業課の接待交際費が予算をはるかにオーバーしています。打ち合わせ食事代、会議費、焼肉などの飲食費代、空の出張費などいろいろな費目で回ってきますが、海外事業が始まって以降、風俗接待が増えたり、実際、何に使っているのか、意味不明なのですが、総額が本来予算の少なくとも2倍程度になっているのが実態です。
 つきましては、実態の調査を正式にご指示頂き、精査したいと思うのですが、いかがでしょうか。 
 前社長が「交際費は仕事のバロメーター」とよく言ったので、業界では給与は二番手だけど、交際費や諸経費が緩いから三沢の待遇ってトップと差がないなどと揶揄(やゆ)されています。本来、受注や取引先接待になっているのであれば、まさにバロメーターですが、公私混同の温床になっているのであれば、見直しすべきでしょう。
 まさか会社説明会で風俗なども会社の経費で行けるので、待遇はいいって言えないのではないでしょうか。
杉田


<案件10-解説>

 この案件に書かれていることがその通りであれば、なるべく早く成沢課長に報告し、話し合いをしないといけないことになる。しかし、膨大な伝票があり、それは本当には何に使ったのか全く不透明だ。
 まずは杉田に調べさせ、それでも不明な場合、営業課の関係者全員を巻き込んで調べないといけない。
 そのうえで、成沢課長と話し、是正に向けたアクションを考えるべき問題だ。
 そのためのメッセージを杉田に送り、さらに成沢課長とも日程調整し、話し合うべきだろう。