人事アセスメントの必要性

寄稿先:労政時報(財団法人労務行政研究所)



人事アセスメントの必要性

人事アセスメントを解説していきたいが、その前に人事評価とは何かを押さえておかないといけないだろう。人事評価は人事管理を行うあらゆる場面で重要な手続きである。人事評価とは人材と職務を対象に、評価・測定する活動全般のことを意味している。実務の場面では「人事考課」という言葉もよく使う。人事考課は、直属上司が評価者になって、被評価者である本人を評価する手続きであり、人事評価の一部を構成するに過ぎない。つまり、人事考課以外の評価活動を行う場面や必要性がかなりあるということである。人事考課以外の部分の大半を実は人事アセスメントが占めていることを、先ずはご理解頂きたい。

人事評価=人事考課+人事アセスメント

ところが、人事考課の限界を認識しない誤りが今日でも蔓延している。言い換えれば、人事考課制度さえ作り込みすればそれで事足りるという発想がかなりある。例えば、目標管理やコンピテンシーを制度化し、そのままその評価を一次評価者(考課者)に投げてしまう。その場合、評価・測定方法が不明瞭で、そのやり方は丸投げに近いものがある。

まず目標管理。人事考課に直結しない目標管理であれば、業務や成果の把握、部門方針の下位組織への徹底などにも役立ち、それなりの効用や効果を得ることができよう。しかし、達成率をそのまま業績評価の指標にすることは、担当している仕事の難易度が違うので、無理がある。それでも、目標管理は今日、代表的な人事考課制度になってしまっている。

またコンピテンシーは、1970年代、採用手法として誕生したが、マクレランドが外務情報員に適用した際は、テープレコーダーによる試験が開発されていた。これは声を通じて感情を判断させるものとなっていた。その後、1960年代から研究が進められていた、行動アンカー法などの行動尺度が1980年代になって急速に導入され、行動評価として注目を浴びるようになった。日本では1990年代後半になって、こうした尺度をコンピテンシーと捉えるようになった。行動評価は業績評価の手段であり、目標管理を代替する形で米国では普及したが、日本では業績評価と並存するようになったこと、米国では職務別に展開する評価基準がいずれかというと階層別になっていることが特徴である。またコンピテンシーの項目は羅列されたが、企業や職務の特性を考慮した尺度の落とし込みは不十分であった。またコンピテンシーという言葉が独り歩きし、時には踊ってしまい、厳密に職務行動を測定し、それによって業績(仕事ぶり)を評価するという点は見失われがちであった。コンピテンシーはオリジナルな意味では人事考課制度になりえないし、そもそもが無縁である。

なお、ここで言う業績評価は人事考課と同義である。原語であるPerformance Appraisal を高橋潔氏(神戸大学)は「人事考課」と訳しているほどである。業績評価(=人事考課)はここでは主たるテーマではないが、行動評価は尺度法などを工夫し、評価エラーを生じないようにしないといけないことは指摘しておきたい。


人事アセスメントの活用場面と手段

人事考課制度は組織内の多数の管理者に担われるので、そのばらつきを収斂させることはそもそも困難である。また人事考課にあまりに大きな負荷をかけるのはそれ自体が評価エラーとなると考えていいかもしれない。しかし、最初にこういう認識がなかなか持てず、考課者研修を徹底すれば適正化は十分可能であるとか、コンピテンシーを導入したのでもう安心、と安易に考えやすい。しかし、収斂、適正化は突き詰めれば無理という前提で、一旦はお考え頂きたい。そうなると、いろいろな場面で、人事考課に代わる仕組みを考え出さざるを得ない。実は現状でもその必要性はある程度認識されていて、相応の人事アセスメントが実施されている。

まず採用場面である。企業規模にもよるが、採用の専任担当者を置き、明示化/文書化されてはいないことが多いものの、選考基準をその会社なりに持っていることが一般的である。採用については、職業適性の基礎となる学力を把握するための学力試験や、パーソナリティを把握するための心理テストが実施されている。これらはアセスメント実施の代表的な例かもしれない。

次に昇格である。昇格に関して人事考課の成績だけで決定している例はそう多くない。昇格対象者である本人の上司の評価を参考にするが、上司以外の上位者の総合的な人物や業績に関する評価を加えたり、たとえ形式上でも論文などの昇格試験を実施することがある。決定権を持つ関係者が本人を直接知らない場合、面接を行う場合もある。また昇進や配置についても、昇格の場合のような、何らかの考査を行うことがある。

では、採用および昇格についてどのようなアセスメント手段が取られているだろうか。まず採用では学力試験、心理テストを行うこともあるが、現状ではそれらは足切りに使うというのが実情で、ツールを十分には使いこなせていない。そのため、面接中心となっている。採用面接は構造化されていない企業がまだ多いが、基準を決めたり、枠組みを決める構造化面接が実施されていることもある。残念ながら、経歴を重視しており、容姿や明朗さ、人当たりのよさなど第一印象中心に評価が決まってしまい、好印象の対象者には入社動機を高めるトークを連発し、そうでない人についてはある程度の時間、質疑などで時間を取っておしまいになる。「5分ほど話せばどんな人かほとんどわかる」と言い切る人事担当も多いが、同じ会社から「見誤りがあった」という声も聞かれる。採用面接はあまりにも多忙を極める中で実施される。選考プロセスを見直し、アセスメント・ツールをうまく使わなければならないだろう。ところが、企業がアセスメントツールを採用するのに慎重であり、疑心暗鬼ということ、提供されているツールもなかなか投資コストが合わずバージョンアップされていないという現状もある。ツール類の現況をユーザーがよくつかみ、業界の水準が向上していかないといけないものと考える。

一方、昇格では役員による面接や、経営層を前にしたプレゼンを導入している企業もあるが、精度はともかく、受検者の選考に対する満足感は得られることが多い。特に選考に落ちた人にとっては人事考課だけで決定されるよりもはるかに納得感がある。しかし、総合的に合否を出すだけになってしまうことが少なくないことには注意しなければならない。後に詳しく述べるが、上場企業の4割以上では人材アセスメント(アセスメント・センター)と呼ばれる手法が採用されている。これは米国で生まれた科学的選考の技法である。研修の形式を取り、いくつかの演習を実施することで評定していくものである。ただ、これも問題が多い。というのも、日本におけるアセスメント・センターは30年以上の歴史があるが、導入当時からほとんど演習教材も代わり映えせず、食傷気味となっているのである。アセスメントは転機を迎えている。コンピテンシーに関するバブルもそれによって生じてしまった。


企業の求める人材像とアセスメントツールの選択法

人事担当にどのような人材を求めているか尋ねると、次の4つが代表的なものが浮上してくる。

<人事担当が挙げる求める能力>
①知的能力、②バイタリティ、③統率力、④ストレス耐性

このうち、知的能力だが、一般に言語的能力と非言語的能力(≒数理的能力)からなる。言い換えると、基礎学力でその中身は国語力と数学力なのだが、普及しているテストを見ると、国語では高校入試レベル、数学では小学校高学年ないし中学初学年レベルの出題で、短時間で実施できるように工夫されているものが主である。職業適性を考えても一定レベル以上の知的能力は必要である。しかし、結果が偏差値表示されるので、その数字を重視し過ぎるという現状がある。この部分は人事担当にもイメージしやすいのであろう。しかし、テスト自体の信頼性の問題もあるし、この点だけを見るために実施するのはテストを活かしきれていないことになる。また入社後、この数字と実際の業績を追ってもあまり相関しないことが少なくない。あるテスト事業者の関係者は、学力試験の結果と業績とは全く相関がないと言い切っている。しかし、この事業者の試験に問題がある可能性もあるし、採用された人材群だけの調査では本来、不十分である。なぜなら、企業は高得点群のみを採用していることが多いからである。

なお、昭和30年台以前は、大学で履修するような専門科目(例えば経済学、憲法など)を企業が採用試験に用いていたことがあったようだ。これは大学で真面目に学業を修めていれば、入社後も活躍するだろうという予測があったということと、公平性を期すためだったのだろう。ただし、戦前からの流れで、指定校制があり、それは入社試験を受ける前提でもあったようだ。これは出題者側の負担もあり、いつの間にかなくなってしまった。

今日、適性試験の学力テストを活用することは実質的な指定校制の機能を果たしているという指摘もある。実質的な指定校制なのだが、学力試験によるスクリーニングがあり、母集団を絞り込むと、結果はかつての指定校がほぼそのまま残るというのである。ただ、違いは出身校ごとに細かく割り付けていたところ、ある時期からは一定以上の銘柄校なら原則として変わらないということにしたに過ぎない。企業の言う「出身校を問わない」というのはこのようなことを意味する場合が多い。依然として出身大学がよければ活躍するとの信念は企業に強いことを実感している。人事担当が社員を評する場合、出身校を述べ、その上で頭が切れるといった表現で表現することが現在でも圧倒的に多い。人間関係をうまく御するなどという話は二の次で、あまり出てこない。

企業が基礎学力、つまり知的能力を偏重しているという実情は相変わらずで、ますます銘柄校重視になっているほどである。理由は全体としての学力低下で、結果的に上位校シフトが起こっている。しかし、職務適性や入職後の業績との相関性を考えれば、疑問の残る対応である。職種によっては無関係とは言わないが、一定レベルをクリアしていれば十分ではないかと思うことが多い。むしろ感受性など場の雰囲気を察知する能力などのほうが入社後の人事評価と相関しているようだ。ちなみに、感受性と学力はほとんど相関しない。

次にバイタリティだが、意欲的側面のことを指している。気力、体力と言ってもいいかもしれない。企業に入ると、いくら頭がよくても持続しないと話にならない。何らかの任務を全うするには不屈の精神と持続性が必要になってくるだろう。これは後掲の行動評価着眼点にある個人特性のうち「能動性」に相当するものである。ただし、企業が採用場面でこのバイタリティを問題にする場合、外見的に見えるタフさや明朗さも問題にしていることが多い。その意味で「気迫に満ちた態度や第一印象」も含まれている。これは同じ表で言えば、「対人インパクト」である。企業は体育会出身者を好むという傾向も昔からあるが、外見的なものが内面的なものに裏付けられているとは限らない。

また統率力だが、別の表現をとればリーダーシップのことであろう。英語でリーダーシップとは影響力のことを意味し、表でいえば、「対面影響力」に相当する部分が第一義である。しかし、「率先性・イニシアティブ」や「対人感受性」などに裏付けられた幅広い部分をイメージしていることが多い。

外食産業に属するある企業で行動評価項目を策定した際、「普段はコミュニケーションを密にし、物事を言いやすくする雰囲気作り、人間関係を作りながら、言うべきときにはしこりの残らない注意の仕方でたくみに年配のパート社員の行動を矯正する」という行動要件をまとめたことがあるが、まさしくこういう部分を企業は問題にしている。

業種によるが、スポーツ経験などを尋ね、そこでリーダーになった経験があるかなどを重視する企業も多い。入社して1-2年でアルバイト社員などの統率を行う職務もあり、その場合、上述したような知的能力はそこそこであればよく、むしろ統率経験を確認することで、入社後の統率力を期待する場合がある。

最後にストレス耐性だが、対立や葛藤の中で生じる圧迫に耐える特性のことである。葛藤処理や精神的余裕、行動の安定性を指している。アセスメントをしていると、ストレス耐性が低いと、普段の能力が思うように発揮できないことが観察される。普段の実力をいかんなく発揮できる能力特性と言ってもいいだろう。またこのストレス耐性は開発が困難で、性格的なものに起因することが多い。職務経験によって開発されていく部分はあるが、仮にその習得スピードに差がないとすれば、高い実在者を採るほうが職務成功の可能性が高いということになる。新しいツールはこの点を重視した構成になっているものもある。

ストレス耐性をめぐってはいくつかの意見がある。まず、早稲田大学教授で、かつてモービル石油の人事部長だった梅津祐良氏は、昇格アセスメントで最も重視される項目の1つがストレス耐性だと指摘している。理由は伸ばしにくいからである。また元リクルートワークスの海老原継生氏は、「企業の行う入社試験は様々な形でプレッシャーをかけてそこでギリギリでもパフォーマンスを発揮できるかどうか、突き詰めればストレス耐性だけを診ようとしている」と言い切っている。

アセスメントを10年以上行ってきた経験でも、ストレス耐性は確かにアセスメントの結果全体に大きく波及する項目である。しかし、因子分析を行っていくと、ストレス耐性と対人感受性が逆相関することがあることにも注意したい。十分な対人感受性を保持しつつストレス耐性も高い人材が活躍すると考えるべきである。

またストレス耐性は職場不適応とも関連している。多くの企業は近年、従業員のメンタルヘルス問題に非常に苦慮している。90年代半ば以降は中高年社員の自殺も急増し、鬱病なども問題になっている。そこで、採用時点からストレスに強い社員を求めるという問題意識がますます強まっている。鬱病などの精神疾患の罹患率は職種によって異なるが、SEなどで際立って高いという報告もある。

こうした意味からも企業は単に知的能力や面接時だけの印象だけではなく、情緒安定性があるのか、人格障害などの問題がないのかなどに急速に関心を寄せるようになってきた。以前は精神疾患など他人事であり、あくまでも一部の例外的な存在という捉え方が多かったし、そのための対策もほとんどなされていない企業が主流だった。しかし、成果主義で職場風土が変わるなどより強い個人のあり方が求められる中、ストレス耐性はある意味で最もキーになる特性として浮上してきた。

なお、ここで人格障害についても少しだけ触れておこう。パワハラが問題になるなど今日では成果や業績による評価だけで昇進させた結果、そうした風土の中で育った管理者による問題行動がクローズアップされてきた。管理者を成果や業績で評価する限り、問題行動を多少起こしても異動させることは難しいだろう。こうした現象は社会問題にもなっているが、人事担当は近年、そのことにも悩んでおり、せめて採用時点では問題行動特性を持った人材を弾こうとするようになった。また入社後1年以内に離職するような新人での不適応も多くが何らかの人格障害に起因するものが多いという声がある。しかしながら、人格障害への理解もそれを意識した採用選考技法もまだまだという感じがする。採用活動に従事する担当者が性格心理学やパーソナリティへの理解を深めなくてはいけない必要性はますます高まっている。


具体的なアセスメントツールの使い方

企業が採用活動や社員の適性を把握し、それによって採用選考や適正な配置を決定すべきことはこれまでも指摘してきたが、その場合、アセスメントツールをどう活用するかが問題になってくる。そこで、表にして情報収集可能なツールを一部列挙した。これらが市場における主要なツールかどうかは断定できないし、これらがどの程度使用されているかも実態調査を行わないと把握することができない。以前、リクルートワークス研究所でこうしたツールの使用状況について調査したことがあり、その際、コメンテーターを行ったが、回答数が非常に少なく、有効な調査結果と言えるものではなかった。ただ、そこでわかったことは圧倒的にSPIが高いシェアを占めており、それ以外のツールの活用は極めて分散していて、甲乙つけがたいということだった。しかも、表にあるツールはランキングにほとんど出てきていなかった。その際、ある企業がランキング上位ということで自社セミナーにおける宣伝に使ったこともあったが、使用社数は5とかそれ以下の少数での得票だった。またSPIが多いという結果も、もともとSPIのユーザーであるところに多く調査票が配布されたことを考慮すれば、頷ける結果だった。

またアセスメントツール全体に言えることだが、大学教授や著名コンサルタントを顧問にし、権威付けすることが多い。しかし、その場合、権威付けにされている大学教授との関係がほとんどないこともあり、勝手に名前を使っている悪質な例も少なくない。また日本でパーソナリティ研究のツール化をしているのは慶應産業研究所などそう多くなく、有力大学の心理学科はほとんどが実験心理学を中心にしている。また開発者に正当な対価を払わない結果、係争になっている例もあり、そうした場合、ユーザーにも似たような対応をする懸念が考えられる。外資系コンサルタントを看板にして売りにしている事業者もあるが、パーソナリティ心理学に精通した人事コンサルタントはそもそもごくわずかで、単なる広告塔になっているだけで、かえって信用できない。こうしたツールかどうかはよく確認してから活用を検討した方がよいだろう。著名コンサルタントや大学教授などが協力し、鳴り物入りで発売を開始し、一時的に大キャンペーンを行いながら、数年で撤退したケースも知る限り、いくつもある。また残念なことに、心理系の学会に加入し、あたかも識者を抱えているふうに見せかけている事業者もあるが、実際に学会発表をしているのかなども確認すべきかもしれない。

また大量に使う場合、価格も重要な基準となっている。ほとんどの適性試験が1件につきいくらという方式になっているが、単価は一人当たり2000-5000円程度になっている。採用選考の前の段階で使う場合、1000円の差は小さくないので、価格で選んでいる例も少なくない。近年、学生がオンラインでエントリーできるようになり、一人の学生がたくさんの企業を応募するようになった。企業が説明会の後に試験を実施することもあり、適性試験の腕試しに受験してくるケースも多い。したがって、初期の段階では単価の低い試験、あるいは学力試験のみを活用して足切りに使い、後にパーソナリティをつかんで採用面接に活用するテストを分けている活用例も増えている。なお、単価は人数に応じてボリュームディスカウントがあり、少ない場合は高くなる。逆に受験者数が多い場合、4割以上の割引がある場合もあり、カタログ単価はあくまでも建値と考えてよいかもしれない。

表にして示したツールとその解説であるが、各社のホームページ情報及び業界情報、各企業の声などを参考にまとめてみた。ところが、導入企業数などは公称のものであり、シェアの最も高いSPIが6000社とすると、その他の提供企業が1000社を超えるとは考えにくい。ただし、前述したように複数のテストを採用するケースがあること、過去の導入企業もカウントしていることなどから、社数が多いのかもしれない。こうした情報は各社の営業上の思惑もあり、あまり額面通り信用せず、ツール選びはトライアルなどで検討していくほうがよいかもしれない。業界関係者の話ではあまり売れていないテストを含めると100以上のものが乱立しているということだった。テスト事業者懇談会という団体があり、ここの関係者はこの団体に加入していないテスト事業者はモグリだとコメントしていたが、この団体にはテストを販売していない企業、提供しているもののマイナーな事業者も含まれている(現在加入事業者は19社)。

またここにないからといって、全く使用されていないというわけではない。経年比較をするならあまり実績のない商品に手を出すのも悩ましいところだろうし、選定する場合、開発者が内部にいて定期的なバージョンアップやメンテナンスを行えるということもポイントである。この場合の開発者とはシステム開発ではなく、テストそのものに精通したソフトの開発者やメンテナンススタッフを意味している。

心理テストは依拠している理論がある。例えば、気質理論は、慶應義塾大学名誉教授でパーソナリティ心理学の権威佐野勝男氏が70年代まとめたもので、その1つである。佐野理論とも言われ、人間の気質を5つの要素で説明しようとするもので、パーソナリティ・スケッチにある程度有効である。これに依拠したテストも日本では結構ある。

このほかに代表的なものとしてビッグファイブがあるが、これについてフロンティアを行く辻平治朗氏や丹野義彦氏らは90年代以降、通説となってきていると指摘している。今後はテストの背景理論の換骨奪胎が進むかもしれない。識者は気質でのパーソナリティ説明力を60%程度としている。説明のつかない部分も多いということである。

具体的な適性試験の位置付けや活用方法だが、採用選考全体のプロセスを計画的に考えないといけない。応募者の増加という状況を考えると、採用選考をプロセスとして捉え、どの段階でどのような基準でどの程度絞り込むのか、どの部分で入社動機を高めるのか、入社後のキャリアをイメージさせたり、仕事の内容をいつどのように告知するのかを想定し、その上でツールを活用しないといけない。企業は自社の面接による選考に自信を持っていることが多いが、短い面接でわかることは表面的な部分に留まることが多く、パーソナリティを把握する手段としてツールを活用しないといけないだろう。厳選採用になっている現在、そのことの重要性は企業にも認識されてきている。

なお、本稿では組織診断ツールについては触れなかったが、内情は開発コストがかかる割に販売数が少なく、成功した事例は少なく、紹介できるソフトが見当たらない。組織診断といっても、実際には個人特性診断とセットで実施したりすることのほうが多い。事業者の中には組織診断ツールを発売しているところもあるが、採用選考ツールと比較すると、販売個数は非常に少なく、コンサルティングや調査と併用して実施されないと採算が取れないという事情もある。こうしたツールが普及していくのは今後のことであろう。


アセスメント・センターの位置づけと活用法

アセスメント・センター(assessment centers) は、実際の職務状況になるべく近い場面を作り出し、その演習(シミュレーション)を受検者(アセッシーという)に体験させ、その状況を複数の評価者(アセッサーという)が観察・記録し、複数の演習を通じて観察された評価を総合化して受検者の評定を行うものである。1970年代に日本に紹介され、3つの経路をたどった。1つは定型的なアセスメント・センター(アセスメント研修)を導入したところ、もう1つは定型的なアセスメント演習を参考に自社内で能力開発型研修として導入したところ、さらに1つは興味を示したものの、導入を見送ったところである。

アセスメントでは、いくつかの演習を行うが、次の3つが主要なものである。グループ討議では、予算取りや管理問題についての討議を行い、面接演習では問題のある部下へのフィードバックや顧客面談を行う。インバスケットと呼ばれる演習では架空の組織が設定され、与えられた立場に対して報告や連絡、相談、苦情などを含む未決案件が与えられ、それらをもとに意思決定を行い、メッセージを送るという形で実施される。このほかにプレゼンテーションやチームビルディングといった演習もある。これらの演習とそのフィードバックを通常は3日間コースないし2日間コースで実施する。

日本においては主要なアセスメント・サービスの機関が、アセスメントで実施する演習教材をあまり工夫せず、20年以上も同じものを利用してきたという経緯がある。本来、演習教材は職種や階層を考慮して適切なものを設計しないといけない。またアセスメントの際に使われるディメンションについても全く同じものを用いてきた。ベーシックなもの以外に、職種や階層などを考慮して工夫する試みが必要だったのではないだろうか。アセスメントの結果が実際の活躍とギャップがあるという指摘もあった。また研修の一種であるため、80年代後半のバブル期には講師不足に悩み、その結果、質の低下がかなり進んだ。また90年代に入ってからは教育予算が劇的に減り、アセスメントの実施も見合わせるケースが増えた。

こうした事情が災いして、定型的なアセスメントは風化し続け、内製化が進み、実施を見合わせる企業も出てきた。ある大手企業は、技術者について独自にアセスメントする仕組みを作り上げてきた。また別の企業はアセスメントの手法を中途採用や管理職昇進の際に自社なりに工夫し実施してきた。このように企業内で関心を持ち続け、自社なりに創意工夫してきた例は少なくない。こうした取り組みが近年は外部コンサルタントを巻き込んだ自社版プログラム開発へとつながってきている。

長らく人事アセスメントに悩み続けた企業が飛びついたのがコンピテンシーと行動インタビューという手法だった。この動きは90年代半ばからつい最近の2003年ごろまで熱狂的に実施されてきたものである。しかし、これらも過去の遺物として紹介せざるを得ない。
表では行動評価着眼点を示しているが、これはアセスメントを実施する際に活用する評価基準である。アセスメントの結果を因子分析すると、一般的には、第一因子は「課題遂行能力」というべきもので、おおむね意思決定系の項目がそれらにほぼ相当する。また第二因子は「対人影響力」というべきもので、おおむね対人特性系に相当する。このことから、行動評価着眼点を意思決定系、対人特性系、個人特性系の3系統及び問題特性系に分類することにした。


行動インタビューの可能性と限界

コンピテンシーについては「高業績者の行動特性」であるという一般的な理解をここでは採用しておきたい。スペンサーの主要文献 が翻訳されたのは2001年だが、そこに書かれている内容はその前から断片的ながら紹介され、実務に落とし込まれていた。スペンサーは同書で「アセスメント・センターはロールスロイスだが、行動インタビューは言うなれば日常車で、簡便法」と述べている。「コンピテンシーの新約聖書」とも言われた同書の影響力は大きく、ただでさえも風化し続けてきたアセスメントの手法について、ここで一気に流れが変わった。スペンサーによれば1人1時間程度のインタビューを行えば、アセスメントが行えるということだが、実際の導入事例はどうだったか。

ある外資系製薬会社の場合、1人30分と決め、評定項目を指導力、達成意欲、成果志向性など4項目に設定し、5点法で採点する。社内担当者及び社外アセッサーの2名のペアで実施している。評価項目は多少異なるが、こうしたやり方はいくつかの導入事例があり、一般的であろう。このほかでは面談は確認時間と位置づけ、受検者に過去1年の業績や成果のうち、自分が貢献したことを克明に書き記すという企業もある。インタビュー実施のために事前にインタビューから得た情報をどう評価するかを構造化し、また関係者(インタビュアー)をトレーニングにし、実施日に備える。

実施している企業の声は、次のようなもので、あまり満足度が高いわけではない。まず、アセッサー間のばらつきが非常に大きくなること、そのトレーニングが案外難しいこと、次に面談時間があまりにも短く、十分な聞き込みや掘り下げができないこと、また業績や成果があることは他の情報から明らかにそれをうまく表現できない人が多いこと、逆に架空の成果貢献と思える言動を評価してしまっている現実があること、などである。コスト面では外部アセッサーをどの程度拘束するかも分岐点であるが、人事担当などが関わると、面接での言動以外の情報もあり、アセスメントの趣旨に反することにもなりかねない。

これは私のアセスメント経験だが、上記の批判はおおむね当たっており、もし面接実施時間が30分程度なら、評価項目は2項目、3段階評価が手頃だろう。また「評定不能」というのを含めないといけない。その場合、アセッサーを代えて追加面接を行うくらいの余裕を持ってコースを運営しないといけない。評定項目としては、上昇志向、責務感、チームビルディング、問題意識などが比較的評定しやすいと思う。

このように、2項目ないし3項目しか導けないとすれば、あくまでも行動インタビュー(アセスメント面談)は補完的技法と位置づけざるを得ない。スペンサーの言う簡便法にすることは困難と思われる。ただ、演習ではない実践に踏み込んだ技法なので、職種や階層によっては活用価値を否定しきれない。


今後の人事アセスメントはどうあるべきか

アセスメント・センターについては問題点を指摘したが、その対応策を簡単に述べれば、自社の実情、すなわち、向かうべき方向性や戦略、また抱えている問題点などを踏まえ、アセスメントがどうあるべきかを考えないといけない。そうすれば、自ずと、項目設定やレベル設定も汎用版では行かなくなるであろうし、適合性の高い演習を選択したり設計したりすることになる。また風化しつつある演習教材や評定項目を、自社なりに再構築するのがコスト高であるからとか、コースの設計が面倒だからということで、提携版に安住し、古典的であると廃してしまうのは早計である。段階的でもいいので、コースの体系をカスタマイズする努力をしないといけない。

また多面評価についても多少触れておく必要があるだろう。多面評価の手法そのものは複眼評価という形で早くから試みられた事例もあり、米国に対して日本が先行するという事実がある。ところが、90年代は米国で非常にブームになった手法であり、逆輸入という形で一時もてはやされた。しかし、そのときに定着まで進んだ企業はそう多くない。表向きは入力手続き上煩瑣であることが理由に挙げられるが、部下や同僚からの評価を受け容れることが難しかったことや、普段一定の距離を持っている同僚が評価するには評価観点が細かく過ぎて実情に合わないなどの問題点があった。こうした諸問題を解消していけば、今後新たな普及への道は開けてくると思われる。

というのも、成果主義と共にコンピテンシーが注目され、その延長線で多面評価を導入しようとした際、まだ機が熟していなかった。企業は低迷する業績を気にして高業績を生み出すコンピテンシー、高業績に引っ張っていく目標管理に関心を示した。しかし、その結果、コンプライアンスが疎かになった。以前、ある雑誌にコンピテンシーについて解説したことがあるが、そこで書いたのは、コンピテンシーは職務分析の一種であり、業績に関係する要因のみを拾う、その簡便法だということである。調べてみると、業績に関係しない要因として浮上してくるのがコンプライアンスなのである。こうした行動を誘発するには成果主義に加えて多面評価を併用することが効果的ではないか、またそういう要素を含めて設定するべきではないかと考えている。

多面評価は必ずしも重厚なシステムがないと実施できないというものでもない。例えば、補完的な取り組みとして運用することもできる。既存の評価制度では問題にしにくい観点のみを評価基準にし、極めて簡単なアンケートとインタビューで被評価者の情報を収集することができる。自由記述方式とすれば、特記事項なしの回答を受け付けることもできよう。どういうわけか、人事担当は最初から完成度の高い、しかも全体的な処遇システムに強く関連付けられた方式を構築することに躍起になるが、そういう必然性はあまりないだろう。現状は職能資格制度を大きくリニューアルして全体枠組みから細部まで動かしきれないほど人事制度が精緻化されているのが現状で、当面はそのマイナーチェンジと補完的な取り組みで十分な企業が大手では多い。中堅中小でも何らかの業績連動型になっており、今もなお年齢や勤続年数を主とした年功での決定はそうメジャーなことではない。

人事アセスメントのあり方及びツールの使い方を解説してきた。人事担当にパーソナリティなどの専門知識が不足するなどインフラの問題もあるが、日本の場合、人事制度のあり方が全般的に横並び的な意識が依然として強く、自社に合ったやり方とは何かを十分に考える余裕のない企業が少なくない。適性試験の選定では権威主義も目立ち、売り口上にすぐに乗ってしまうケースも残念ながら多い。こうした諸問題を意識しながらアセスメントを人事制度において一層重視していくべきだと考えている。なお、本文中、引用文献などは紙幅の都合上、また煩瑣なので、ほぼ全面的に割愛させて頂いた。

コラムの割愛部分は次のサイトをご覧ください。

http://www.jexs.co.jp/column010.html